2023年度 活動日誌

3月 活動日誌

2024年3月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今月は、短期語学セミナーで多数の大学から日本人学生がサラマンカを訪れ、本学の日本語学習者とたくさん交流が図れました。

また、日西文化センターで第二週目に日本週間が行われました。第三週目には文献学部でも日本週間を開催しましたが、文献学部の催しは学生が考えを出し合ったもので、学生が主に係を担当して進行しました。それぞれ内容もカラーも別でしたが、どちらも日本人留学生を誘って参加する様子なども見受けられ、充実した二週間でした。

そのほかにも、卒業後の進路についてハイブリッドで2セッション行いました。一つは進学のためのセッションで、日本政府の奨学金についての説明に加え、日本で修士課程を履修し、博士課程に向けて準備を進めている卒業生の話を聞きました。もう一つは就職のためのセッションで、ワーキングホリデーを利用して日本へ渡航した卒業生、日本のICEXでの研修生、個人で日本へ渡り、就職にたどり着いた卒業生、スペイン国内でアジアの企業との仲介役を果たす卒業生に参加してもらい、貴重な話が聞けました。いろんなところで活躍している様子を知ることができ、現役生は目標がはっきりしてきたかもしれません。教員にとっては、卒業後大いに活躍できる人材の育成に励もうと改めて感じるセッションでした。

3月最終週は聖週間に入り、大学は閉鎖していますが、今年度終盤を迎え、卒業論文、レポート、課題などに時間を充てると言っていた学生も多く、短い休み中、気分転換もしながら目標に向けて進んでほしいと思います。

2月 活動日誌

2024年2月29日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今年度は試験明けに一週間の試験見直し期間、もしくは後期開始に向けた調整期間が設けられ、学生も教員もかなり消化して後期の準備を整え、授業が開始できました。言語交流会も、後期のみ留学の学生などの新しい顔ぶれがあり、週に一回ですが有意義に続けられたらと思います (写真1)。

しかし授業に加え、イベントも一気に芽を吹き、なかなか忙しない日々だったと思います。大学内でも学会や講演会、ワークショップが開催されますし、大学が保持するイベントホールなどでは、映画や演劇の上映会、音楽コンサート、詩の朗読会など、実に様々なイベントがあります。更に、サラマンカは文化行事が目白押しで、映画館、コンサートホール、スポーツ施設など、観光を含め力を入れている街だと思います。日本では考えられませんが、こちらでは入場無料が多く、入場料があったとしても、日本に比べるとかなりお手軽に楽しめます。

イベントには日本関連のものも多く、今月は相撲に関する講演会、日本の映画やドキュメンタリーの上映などがありました。

私は今月、カテドラルのオルガンを見に行くツアーに参加したり、作曲家バッハの学会の一部を聞きに行ったりできました。ツアーでは、ヨーロッパ最古、つまり世界最古とされるオルガン (写真2) を見たり、狭い階段を登ってオルガンの傍まで行ったり、専門的な説明や演奏も聴くことができました。何台もオルガンがあったことをこのツアーで知りましたが、新カテドラルにあるルネッサンス様式のオルガンは、日本人が修復を手掛け、日本とサラマンカの交流のきっかけともなっています (写真3,4)。ちなみに、カテドラルには、サラマンカ在住の人は無料で入ることができます。

学会の方は、サラマンカの旧カテドラル内の一室で開催され、それだけでも魅力的な学会でした (写真5)。実は、サラマンカ大学は歴史的に音楽が栄えていました。現在もバロック音楽などは名声を維持しています。

スペイン語学を通して、文学や音楽においても由緒あるサラマンカの色々な魅力を、是非味わってみてください。

(写真1:言語交流会の様子)
(写真2:旧カテドラルの一室にあるヨーロッパ最古と言われるオルガン。仕組みは修復できず、外観のみ保存されている)
(写真左3:新カテドラル内聖歌隊席)
(写真右4:日本人が修復したオルガン)
(写真5:学会「バッハの後のバッハ」における、大学合唱団の指揮者も務める数学者による研究発表)

1月 活動日誌

2024年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

(写真1:ドライフルーツの中で一番人気のオレンジだけを飾ったロスコン。手作りする家庭も多い。)

冬休み明けは前期科目の試験が待っています。そのため、新年が明けると、早々大学生たちは試験勉強モードに切り替えていくようです。しかし、1月6日の公現節 (Epiphany) の日のお祝いは欠かせない行事になっていて、再び家族で集まり食事をすることが慣例ですから又特別の一日になります。この日デザートやおやつとして食べられるのがロスコン roscón (king cake) と呼ばれるドーナツ型のパン菓子です (写真1)。ふわふわの甘い生地のパンだけでもおいしいですが、中に生クリームやチョコクリームを入れたバージョンもあります。パンの上には、たいてい砂糖漬けのフルーツやアーモンドスライス、パールシュガーが飾られていますが、実はフルーツの砂糖漬けは、人により好き嫌いが激しく、わざわざ避けて食べる人がかなりいます。それでも彩のためか、このフルーツが上にのっていなければロスコンではないからか、どこで買っても必ずついてきます。オレンジにメロン、すいかやサクランボ、と、昔は大変貴重なものだったのでしょうが、ほとんどの人が口をそろえて苦手だと言います。食べてはいけない飾りのようにお皿に取り残されていく果物たち。「私は好きだけど」と言うと、「年配の人は好きな傾向にある」んだとか。このパンの中には、キリスト誕生を祝ってこの日にやってくると伝えられている三博士を模った小さな人形や、ソラマメが仕掛けられているものもあります。ソラマメは翌年のロスコンのお代を払う番の印ですが、子供たちにとっては、切り分ける時にも食べる時にも、何らかの当たりが出る楽しみとなっています。

今月一か月の天気は全国的に5月の気温をマークするなどいい天気が続きましたが、クリスマス休暇明けの1月10日、スペイン政府は病院や医療機関でのマスク着用を義務としました。振り返れば、11月ころから周囲で風邪が大流行していましたが、かなり長期にわたって風邪をこじらせている人もいました。休暇期間中にピークを迎えたのでしょう。久しぶりに皆マスクをし始めましたが、2週間もしないうちに解除され、また平常に戻ってしまいました。「戻ってしまった」というのは、マスク携行はもちろん手洗いの励行などが維持されない、ということです。これは文化的に日本人にとっては受け入れがたいことかと思います。

3週間の試験期間を終えた学生たちは後期授業開始まで帰省するなどしたため、学生の街サラマンカは、どこか閑散とした一方、日本人留学生と多々すれ違い、春休みを利用したスペイン語短期セミナーへの意気込みを感じました。短期だからこそ集中的かつ計画的な学習があると思います。アンテナを張り巡らせ、スペインをまるごと知ることができますように!

12月 活動日誌

2023年12月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今年はスペインの全国的な祝日である12月6日の憲法記念日と8日の無原罪懐胎の日(Inmaculada Concepción / Immaculate Conception)が週の半ばにあたりました。その2週間後には冬休みに入りますが、この休みの日、一足先に、クリスマスに向けての買い物や仕事の同僚あるいは友人同士での食事会などが行われるのが恒例です。中日は休みではありませんでしたが、スペインでは休みに挟まれた平日を休みにすることをプエンテ puente (橋)といい、連休にしてしまう人がほとんどでした。大学キャンパスも閑散としていましたが、文献学部があるアナヤ広場(Plaza Anaya)は、カテドラルや大学のファサードを見に来る観光客でいっぱいでした。学部の建物の中は大学関係者以外立ち入りはできないようになっていますが、やはり魅力ある建物を見たい気持ちは誰も同じで、観光客とよくすれ違います。サラマンカでの訪れるべき場所となっていることを象徴するように、今年は移動式のダ?ヴィンチ特別展、移動式メリーゴーランドが設置され、規模が大きくなったクリスマスマーケットと共に、アナヤ広場を埋め尽くしました。(写真1,2,3)

スペインではクリスマスは一大イベント。イブに間に合うように帰省し、家族で過ごすのが慣わしです。そのため、大学の街であるサラマンカでは、毎年クリスマスの一週間前の木曜日に「大学生のための『大晦日』」が行われます。今年とお別れをする、ということですが、大学生もそうでない人も、マヨール広場(Plaza Mayor)で野外音楽を楽しみ、12回つかれる鐘と共に12個のグミを食べる、というものです。かれこれ20年くらい続いているそうで、最近では、他の町も真似をするようになり、以前ほど大型バスで人が押し寄せるということはなくなったように思います。今年は14日。夜20時過ぎころ帰宅する筆者とすれ違うのはキラキラ輝くドレスを着た若者たち。首周りの広いものや丈の短いスカートをはいています。寒さなんてへっちゃら!と言わんばかりはしゃいでいます。日本語の学生も、日本人留学生もマヨール広場に集まって楽しんでいるかな、明日の授業は学生が少ないか夜更かしのにおいが漂うか…、と思いながら歩いていると、後ろから「せんせい!」と落ち着いた声。こんな時間に誰? と振り返ると、日本語の学生でした。今からマヨール広場に行くのか尋ねたところ、「私はパーティーが嫌いなんです」と満面の笑みで一言。手には暖かそうな晩御飯が。なるほど、それぞれの過ごし方、楽しみ方がありますね。

言語交流会は22日で前期分を一旦終了しました。22日は大学の最終日。クリスマス前の金曜日の午後にも集まる人がいるほど、今年は大勢での交流となり、それぞれが良い収穫を得たようです。来年は2月から始めます。どうぞよろしくお願いします。


(写真1: カテドラルの前に置かれたライトは、キリスト降誕を知らせるベツレヘムの星。)
(写真2: アナヤ広場に広がるクリスマスマーケット)
(写真3: 翻訳学部から眺める夜のカテドラル。)

11月 活動日誌

2023年11月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

10 月31 日のハロウィンの翌日は「諸聖人の日 Todos los S antosantos(All Saints DayDay)」という国の祝日があり、それが終わるとあっという間にクリスマスの準備に入りますが、町の至る所でライトアップ用の電灯はもちろん、クリスマスのモチーフが飾られ、準備が進んでいきます。大学近辺にあるキリスト教書籍?聖品を扱う店のショーウィンドウではいろんなキリスト降誕の置物が売られていましたが、実に様々な種類があり、サラマンカの民族衣装を着せた像も発見しました(写真1)。

街中がソワソワした雰囲気になる中、11 月は大学では休みがない踏ん張りどころです。学内では、今年も「言語の日」が行われ、いろんな言語のスタンドが出ましたが、日本語は学生が主体となって実施しているせいか、特に盛況で、一日中人の波が絶えませんでした(写真2)。

また、サラマンカ大学は今年、「日本の年」を開催しており、講演会だけでなく、いろんなイベントがありましたが、それにちなんで、日本スペイン財団が毎年開いているシンポジウムが今月サラマンカで行われました(写真3)。専門家のみで一般には非公開ですが、100 人近くの知識交流となりました。科学や企業に焦点をおいているこの財団。日本語教育に携わる者として、いかに社会で貢献できる人材を育てていくか、目が覚めた思いでした。

一方で、公立図書館の子どもから中高生までのセクションの一角に、「日本」と題したコーナーが設置されているのが目に留まりました。相撲や盆栽などの伝統的なものから、アニメや映画に関するポピュラーなものまで、カラフルに日本文化が紹介されていました(写真4)。サラマンカは小さな町で、内陸の閉鎖的な性格がある町ですが、特に若者に広がっている今のこの日本ブームの勢いに乗って、日本への理解を促進していくべきだと感じました。


(写真1:大学近辺にあるキリスト教書籍?聖品を扱う店のショーウィンドウ。サラマンカの民族衣装を着せたキリスト降誕の置物)