TUFS Today
TUFS Today
特集
東京外大教員
の本
TUFS Today
について

東京?カリフォルニア、そして福島をつないでオンラインフィールドワーク ?聞き書きを通じたハザードスタディーズ?

TUFS Featured

東京外国語大学では、大学の世界展開力強化事業(COIL型)プロジェクト「多文化主義的感性とコンフリクト耐性を育てる太平洋を超えたCOIL型日米教育実践」(以下、本プロジェクトの通称の「TP-COIL」と記す)により、アメリカの大学等と連携し、オンラインを活用したさまざまな双方向授業や幅広い交流を行っています。

その活動の一環で、2021年1月下旬~2月の冬学期に、授業科目「就業体験」において、福島でのオンラインフィールドワークを実施しました。オンデマンド形式による事前学習と、リアルタイムでつながるオンライン形式を組み合わせて行われました。どのようにオンラインでフィールドワークを行ったのでしょうか。今回のTUFS Todayでは、本授業の運営を担当した先生方、活動を支援していただいた方、そして授業に参加した3名の学生にインタビューしました。

福島でのオンラインフィールドワークとは

福田コーディネーター

——まずは、TP-COILのコーディネーター?福田彩特任助教に今回の授業の概要についてお伺いできればと思います。福島でのフィールドワークを実施する目的を教えてください。

福田コーディネーター:TP-COILでは、就業体験科目をアメリカの連携大学からの受入留学生を中心に、日本をより深く学び、理解してもらうためのインターンシップの機会として開講しています。この福島でのフィールドワークもその一環です。今年はコロナ禍で完全にオンラインでの実施となりました。このTP-COIL事業では、新しい日本文化理解、安全保障、ジェンダー、ハザード?スタディーズを主なテーマとして掲げています。このうちのハザードスタディーズを学ぶ目的で、福島を取り上げて活動しています。現地でボランティア体験をしながら、現地の方との交流を通じて東日本大震災で福島が経験したことについて学びます。

——この事業を行うことの意義は、例えばどのような点にあると思いますか。

福田コーディネーター:留学して現地の大学で授業を履修し勉強することでも、知識はもちろん、経験も身に付きます。サークル活動に加わったり自分でアルバイトをしたりしながら現地社会と関わって見聞を広げる学生もいます。しかし、大学としても、専門的な知見を提供しながら、この分野をより深く学んでもらう機会を準備したいと考えました。福島は東日本大震災の時に、自然災害の地震?津波の大きな被害を受けただけではなく、原発事故の甚大な影響を受けています。これは、エネルギー問題に関する全世界の共通の課題です。これからの世界を担っていく学生に、福島の現地の方々と交流しながら、さまざまな背景?観点からこの問題を理解し、語り継ぎ、自分たちの将来について考える機会としてほしいと願っています。

具体的な活動

——続いて、授業の具体的な活動について、田代純一講師にお伺いします。「ハザードスタディ」をテーマにしているとのことですが、どのような考え方で授業を組み立てたのでしょうか。

田代講師

田代講師:昨年度から実施している授業ですが、体験型授業で災害のことを学ぶには、まず被災地に行かせていただくこと、そしてそこに住む方々からお話を聞いて学ぶことが一番大事であると思います。メディアや文献等からだけで被災地や災害の情報を知るのではなく、現地の人々から学び、お一人お一人の感情や温度がある言葉からストーリーを受け取って、知識を形成してほしいし、心で感じてほしいと思っています。既にある教材から学ぶのではなくライブで学ぶ。学びを与えられるのではなく、自分たちで学びをつくる形にしたいと考えました。
当初から日本財団学生ボランティアセンターに協力をして頂き、福島?いわきでボランティアをしながらお話しをお聞きし、学ばせていただくスタイルを軸に授業を組み立てました。しかし今年度はコロナ禍により、現地へ行くことが難しくなり、昨年度から組み立てを大きく変えざるを得なくなりました。

——体験活動では、「ボランティア」と「聞き書き」を二つの軸にしていると伺いました。そのねらいは。

田代講師:「ボランティア」をさせていただくことで関係性も深まります。突然「話を聞かせてください」とお願いするよりは、お互いに一緒に作業をする時間を共有することでよりインタビューも深まりますし、現地で五感で感じて分かることもあります。またお話を聞かせていただくので、少しでも恩返しをという面もあります。
「聞き書き」は、インタビューをしてまとめる技法のひとつで、録音したインタビュー内容を全て書き起こし、インタビュイーの語り口を活かして、原則文章を付け足すことなく、その人の言葉だけでまとめあげる手法です。書き起こしでは、繰り返しその方の話を聞くことになります。何度も聞くうちに言い方や間(ま)など表面上の言葉だけでない部分を感じ取ることができます。
また今回はチームで聞き書きをしましたが、文章をまとめていく中で、どう編集するか、どんなタイトルにするかを考えることがリフレクションにもなります。「聞き書き」は手法であり、学び方の一つです。どんなことが聞けるかはその時にならないと分かりません。まさに自分で学びを作るのによい手法と考え、取り入れました。
今回「聞き書き」はチームに分かれて、農家、住職、活動家の方など生業も多様な4名の方に取材を行いました。そのほかにも事前収録の授業でご協力いただいた方々もいました。同じ被災地に暮らす方々でも、感じている事、考えている事は多様です。多様な考えに触れる機会にもなったと思います。

2019年の洪水で農地に流れてき