さまざまな分野を英語でディスカッション!アメリカとのオンライン授業 ~担当教員?参加学生インタビュー?
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昨今ではテクノロジーの発達にともない、教育現場でもICT*1の活用が推進されています。本学でも、ICTを用いた教育手段として、インターネット回線を使って遠隔で行う「オンライン授業」がいくつか実施されています。その一つが、昨年度の文部科学省「大学の世界展開力強化事業(COIL*2型)」に採択されたプロジェクト(多文化主義的感性とコンフリクト耐性を育てる太平洋を超えたCOIL型日米教育実践 通称:TP-COIL)により実施されているアメリカの大学とのオンライン授業です。
COIL型授業では、オンラインでアメリカの学生と英語を使ってさまざまな分野に関するディスカッションが行われるので、留学予定のある人は特に、その分野に関心のある人、オンライン授業に関心がある人、英語での授業に興味のある人などにおすすめです。TP-COILプロジェクトはCOIL型授業の提供のほかにアメリカの連携大学に留学することをサポートしています。そして、COIL型授業を受けて条件を満たせば、アメリカの連携大学へ留学に行く際に優先的にJASSOの奨学金が受け取れます!

2019年度にいくつかCOIL型の授業が実施されたので、参加した学生さんや担当している教員方にオンライン授業の「実際のところ」をお聞きしました。インタビュアーは、TP-COILのコーディネーター福田彩 特任助教です。
これからオンライン型の授業履修を考えている方は、ぜひチェックしてみてください。今からでもまだ履修が間に合うTP-COIL授業の紹介もします。
*1 ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
*2 COIL:Collaborative Online International Learning(オンラインを活用した国際的な双方向の教育手法)
ディスカッションの幅が広がり多様な意見交換が可能に
?春名展生准教授インタビュー~

——春名先生には、夏学期集中講義でカリフォルニア州立大学ノースリッジ校 (CSUN)とのCOIL型授業を担当していただきました。どのような相手とどのようなセッションを行ったのですか?
春名:私の担当する「Postwar U.S. – Japan relations」という授業と、CSUNの平田恵子先生の「International Relations of Northeast Asia」(北東アジアの国際関係)という授業をオンラインでつなげて授業を行いました。ICUの笹尾敏明先生の授業にもセッションに加わっていただきました。日米安全保障、中国、米軍基地等をトピックスにあげ、在沖縄米軍をテーマにディスカッションを行いました。たまたまCSUN側で授業に参加する学生の中に、沖縄の米軍基地駐在で軍務についていた経験のある学生がいたこともあり、ディスカッションの幅が広がり、多様な意見交換ができました。
——アメリカの大学とディスカッションを行い、教員の立場からはどのようなことが面白いと感じましたか?
春名:ディスカッションでは、米軍基地が沖縄に存続することの是非が議論されました。事前に、いわゆる「抑止力」の問題や住民感情等を扱った関連文献も読んでいましたが、実際にこの議論を切り出した東京外大生は、文献で事前に学習したことではなく、環境への悪影響など環境問題を指摘しました。この着眼点が、現代の学生の関心を映し出していて、面白いと感じました。
——このようなCOIL型授業の機会は、学生さんにとってどのような効果があると思われますか?
春名:COIL型で他大学と接続することは、いつものキャンパスにいながら海外の学生と一緒に授業を行えるという貴重な経験で、学生にとってはとても刺激になったと思います。充実感や高揚感も見られました。その意味では一度参加するだけでも意味があると思いますが、継続的に履修することにより、2回目以降、より主体的にディスカッションに参加できるようになると思います。それから、アメリカの大学とのオンライン授業なので、使用言語は英語で授業を進めます。そのため日本語がまだまだな留学生もたくさん参加しています。留学生と日本人学生の学内交流にも良い機会だと思います。
——ありがとうございました。これからもよろしくお願いたします。
ダイナミックなやりとりの中で様々な観点を共有
?イリス?ハウカンプ特任講師インタビュー~

——ハウカンプ先生はカリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)とCOIL型授業をされたのですよね。
ハウカンプ:はい、私の担当したクラスは、UCRのJohn Kim教授の授業とオンラインCOILセッションを行いました。私の授業は日本の戦時映画と社会に関する授業で、Kim教授の授業はドイツに関するものでした。
——授業の内容は、具体的にどのようなものでしたか。
ハウカンプ:本学?UCRとも、事前に第二次世界大戦直前に制作されたドイツと日本の合作映画を観て、映画の中で、国家の美化や、形式的?物語的な観点から帝国というものがどのように議論されているかについて意見交換をしました。私のクラスでは、映画で日本がどのように表現されているか日本側から焦点を当てて分析し、キム教授のクラスではドイツがどのように表現されているかドイツ側から焦点を当てて分析しました。
——議論はどのように発展しましたか。
ハウカンプ:双方の時代背景のなかで、この共同制作映画が何を問いかけていたのかということが、ディスカッションの主な関心事として持ち上がりました。オンラインセッション中に、Kim教授と私は、学生同士の交流と議論を活発にするため、オープンに比較的枠にとらわれない体裁で、幅広い質問を投げかけました。その結果、たとえば、映画の中でドイツとソビエト連邦の東ヨーロッパへの進出および日本の満州、西方への進出が暗示されていること、ドイツと日本の軍国主義の拡大が映画の中でどのように解釈されていたかを、双方の学生が見出しました。学生たちは、双方の学生と教授との間で隔たりのない交流を持つというダイナミックな経験をし、一つの映画に関してさまざまな視点からでた分析的な意見を共有することで、議論にあがっている問題について理解を深めました。
——ハウカンプ先生の今回のCOILセッションの印象はいかがでしたでしょうか?
ハウカンプ:授業のダイナミクスが好きでした。COILセッションにより、学生はサポートを受けながら刺激的な環境で海外の学生と出会い、交流することができます。特に素晴らしいと思ったことは、双方の学生が非常にオープンに接し、交流を楽しんでいることでした。また私個人としては、この新しい授業を通じて新しい学生に出会えたこともとても嬉しく思っています。とても楽しく刺激的な授業でしたので、Kim教授も私自身も実際にディスカッションに積極的に関わりました。このダイナミックな学習環境は、さまざまな観点から映画とその文脈に関するディスカッションを実現し、学生の学びを豊かにしました。両大学とも非常に前向きな様子で取り組んだので、さまざまなアプローチと観点にも学生たちは触れることができました。
——先生ご自身も楽しまれたのですね!このセッションのワクワク感が伝わりました。ありがとうございました。
心理的な「外」と「内」という概念を崩す
?逆井聡人講師インタビュー~

——逆井先生は、カリフォルニア大学ノースリッジ校(CSUN)におられる長年の研究者仲間の先生とゼミ生のみなさんとCOIL型授業を行ったのですよね。どのような内容だったのでしょうか?
逆井:はい、Junliang Huang先生という、東アジア近代史の文脈で戦後日本文学を考えるという共通の問題意識を持った研究者仲間の授業とオンラインで接続しました。過去の議論を整理することよりも、現在進行形の問題について取り組もうということになり、従軍慰安婦問題を扱った映画を題材にすることにしました。事前に共通の論文を読んで、映画について討論しました。私のゼミは普段は日本語で行っているのですが、アメリカとのディスカッションでは学生は英語でもどんどん議論を展開しており、これが学生の自信にもなったようです。双方の学生の間でシェアされた意見としては、慰安婦問題が外交問題としてのみ扱われるべきではなく、人道的な問題として向き合う必要があるのに、あまりにもその問題の本質が軽視されているのではないかということでした。相手大学がアジア系住民の多いカリフォルニアにあるということもあり、映画を見る前からこの問題について意見を持っている学生が多かったのは良かったと思います。私のゼミ生の中には、この機会をきっかけに、自発的に引き続き慰安婦問題に関するイシューを追っている学生もいます。
——このCOIL型授業の履修を検討している学生さんにコメントをお願いします。
逆井:今の学生は、グローバルに働けとか国際的な舞台に立てとかと言われることが多いと思いますが、それが何なのか、どういうスキルや能力が求められているのかといことを具体的に示されることはあまりないように思います。COIL型授業では、議論において前提とする知識や倫理はど